ハンセン病回復者とその家族に関する人権
ハンセン病は一八七三(明治六)年に、ノルウェーのハンセン医師が発見した「らい菌」という細菌による感染症です。皮膚や末梢神経がおかされる病気ですが、早期に治療を行うことで、知覚障害、運動障害などは起こりません。
また、感染力が非常に弱く、ハンセン病療養所で働いていた職員で感染した人はいないことからもわかるように、抵抗力があまりない状態でたくさんの菌に繰り返し触れる機会でもなければ日常生活では感染しません。
仮にハンセン病に感染しても、治療法が確立している現在では、早期発見と早期治療により、障がいを残すことなく外来治療で治すことができるようになっています。
しかし、治療薬が使用されるようになるまでは、患者を療養所に強制隔離したり、患者の家を消毒したりすることにより、「国が法律までつくって隔離するのだから、ハンセン病は怖い病気」という誤った認識が社会に広まりました。
患者は施設に長年隔離され続け、実名すら名乗れないなど、人としての権利が著しく損なわれてきました。
その後、二〇〇一(平成十三)年に熊本地裁で原告勝訴判決があり、二〇〇九(平成二十一)年にはハンセン病問題基本法が施行され、国と地方自治体の責任が定められるなど、ハンセン病問題は大きく進展しましたが、差別意識の解消など残された課題があります。
元患者や家族の方々は、今もなお苦しみや悲しみを抱えておられます。私たちは、他人事としてではなく、ハンセン病について正しい知識を持ち、自分自身のことと受け止めながら、すべての人の人権が尊重される社会を実現するよう努めていかなければなりません。
■分野別人権問題への取組