ハンセン病回復者とその家族に関する人権問題
ハンセン病は明治6年(1873年)に、ノルウェーのハンセン医師が発見した「らい菌」という細菌による感染症です。皮膚や末梢神経がおかされる病気ですが、早期に治療を行うことで、知覚障害、運動障害などは起こりません。
また、感染力が非常に弱く、ハンセン病療養所で働いていた職員で感染した人はいないことからもわかるように、抵抗力があまりない状態でたくさんの菌に繰り返し触れる機会でもなければ日常生活では感染しません。
仮にハンセン病に感染しても、治療法が確立している現在では、早期発見と早期治療により、障がいを残すことなく外来治療で治すことができるようになっています。
しかし、患者を療養所に強制隔離したり、患者の家を消毒したりしたことで、「国が法律までつくって隔離するのだから、ハンセン病は怖い病気だ」という誤った認識が社会に広まりました。
患者は施設に長年隔離され続け、人としての権利が著しく損なわれてきたため、国を相手取り訴訟を起こしました。
その結果、平成13年(2001年)に熊本地裁で原告勝訴判決があり、平成21年(2009年)にはハンセン病問題基本法が施行され、問題解決の促進に関し、国と地方自治体の責務が明らかにされました。また、令和元年(2019年)11月15日には、議員立法により「ハンセン病元患者家族に対する補償金の支給等に関する法律」が成立し、同年11月22日に公布・施行されました。法の前文では、ハンセン病の隔離政策の下、ハンセン病回復者とその家族の方々が、偏見と差別の中で、ハンセン病回復者との間で望んでいた家族関係を形成することが困難になる等長年にわたり多大の苦痛と苦難を強いられてきたにもかかわらず、その問題の重大性が認識されず、これに対する取組がなされてこなかった、その悲惨な事実を悔悟と反省の念を込めて深刻に受け止め、深くおわびする旨が述べられています。
ハンセン病回復者や家族の方々は、今もなお苦しみや悲しみを抱えています。私たちは、他人事としてではなく、ハンセン病について正しい知識を持ち、自分自身のことと受け止めながら、すべての人の人権が尊重される社会を実現するよう努めていかなければなりません。
■分野別人権問題への取組